アメリカで人工死産した話② 人工死産の決意

そしてやっと検査当日。

初診以来の約2ヶ月ぶりのエコーだったので、成長している手や足が動いているのを見て、とても感動しました。

しかし、そんな幸せな時間も束の間、その映像を見ながら、男性医師に「心臓の位置がおかしい。お腹や肺に水が溜まっている。後頭部がとても膨らんでいる。とても危険な状態だ。」と淡々と説明され、涙が溢れ出てきました。

この2週間、なるべく希望を持ちながら生活していたので、大きなショックを受けました。

そして、私が落ち着いた後に改めて医師と対面で話を聞くことになり、夫とどれくらい危険な状態なのか、ここから生まれる可能性はどのくらいなのかなど、具体的なことを聞きたく質問しましたが、明確な回答は得られず、「どちらにしろうちの病院はカトリック系で中絶手術ができないから、紹介する病院で詳しく見てもらって。」と言われてしまいました。

結局、具体的なことはわからないし、不安を煽られただけなので、それなら最初から別の病院を紹介してくれれば良かったのに・・・と思いました。

 

本当は翌日にでも次の病院にかかりたかったのですが、予約が取れたのは1週間後でした。

この1週間は本当に辛かったです。

これまで抱いていた希望がほとんど無くなってしまって、何を思いながら生きればいいのか分からなくなり、悲観的になっていました。

しかし、この1週間で少しずつ現実を受け入れていた気がします。

 

1週間後、紹介された大きな大学病院へ行きました。

まず、女性のカウンセラーさんが優しく出迎えてくれて、少しホッとしたことを覚えています。

しかし、そのカウンセラーさんから聞かされて衝撃だったのは、「前の病院からは中絶手術をするということで紹介状をもらっていますが・・・」ということでした。

まだ中絶すると決めたわけじゃないのに・・・!

しかも、当日までにそれまでの検査結果のデータが送られてきていなかったらしく、カウンセラーさんも呆れていました。

前の病院は対応が冷たいし雑で、とても憤りを感じました。

アメリカで妊娠できたとしても、そこに通うのはやめようと思います。

 

カウンセラーさんには、「お腹の中の子の状態を確認して、異常や合併症の有無や程度で、中絶手術するかどうかを決めたい」ということを伝えました。

カウンセラーさんは、「私たちにできることはなんでも協力しますし、あなたたちの決定を尊重します」と寄り添ってくれました。

時間をかけてゆっくり話を聞いてくれて、とても嬉しかったです。

 

そこから、エコーでじっくりお腹の中を確認し、その結果を2人の専門医から説明してもらいました。

結果としては、前の病院と同様に、残念ながらとても危険な状態だということがわかりました。

首の周りに水が溜まって膨らんでいる、手と足がむくんでいる、肺や胃に水が溜まっている、心臓の血管が細くなっている、これらの症状がターナー症候群や胎児水腫に該当しているので、予後がかなり厳しく、お腹の中で亡くなってしまう可能性と、生まれたとしてもすぐに亡くなってしまう可能性がかなり高いということでした。

 

改めてショックだったものの、この1週間で覚悟はしていたので、結果を受け入れることができました。

この病院でここまで言われてしまったので、諦めがつき、夫と中絶手術をしようと決めました。

週数が伸びるほど手術のリスクが上がるので、できるだけ早く手術をしてもらえるようお願いし、翌週には予約が取れました。

 

帰ってから悲しくて夫と泣きましたが、向かう方向が決まって、少し気持ちが落ち着いたのも事実です。

 

 

今回の件で、中絶ということについて、たくさん考え、たくさん葛藤しました。

染色体異常が確認できた時点で夫と一番に考えたのは、子供自身の将来のことでした。

もし私たちのサポートである程度自立するまで成長できるのなら、この子を産もう。

でも、異常や合併症を持っていて、生きるのにたくさん苦労するようであれば、中絶しよう。

正直、この世は健常者であっても生きていくのにシビアで、綺麗事で済まない部分もたくさんあると思っています。

今回良かったのは、夫と考え方がほとんど一致していたことです。

また、両親・義両親も私たちの決定を尊重してくれました。

 

様々な意見があると思いますが、私は、当事者本人たちが考えて決めたことであれば、どの意見も尊重されるべきだと思います。

多分、絶対という正解はないのではないかなと思います。

様々な理由で産む・産まないを決めて、生まれてくる・こないということは、それもまた運命なのかと。

 

アメリカでは、中絶が非合法の州があり、今回のように中絶手術をしない病院もあります。

最初にかかっていた病院はそもそも中絶することが前提になかったから、カウンセラーさんもいないし、私たちに対して冷たく感じたのかもしれません。

本人たちが決めるのではなく、法律や宗教上の理由で「中絶はダメ」と強制的に決めてしまうのは怖いなと感じました。

今回は最終的にとても良い病院に恵まれて良かったです。

 

ちなみに、日本で認可のNIPTを受けた場合は、ターナー症候群は検査項目にないそうです。

もし日本だったら、仮に認可のNIPTを受けたとして陰性と出ていたので、エコーで異常を確認してから羊水検査で診断という流れだったと思います。

でも、日本ではアメリカより検診とエコー回数が多いから、どちらにしろ同じ時期に判明したかな。

恐いのは、アメリカでNIPTを受けていなければ、19週時点でやっと異常を確認し、そこから詳しい検査をしたり、中絶について考えなければいけなかったので、手術のリスクは上がるし、時間がない中で精神的ストレスもかかり、さらに辛かったかなと思います。(私が住んでいる州では中絶は24週まで)

今回は結果的にNIPTを受けていて良かったです。

 

ここまで、「中絶」という言葉を抵抗ありつつ使っていましたが、次の記事からは「人工死産」という言葉を使います。

言い方を変えるだけですが、「中絶」という言葉にはどうしてもネガティブなイメージがあるので、今回は私たちがたくさん考えて辿り着いた結果として、「人工死産」としたいと思います。

 

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